湘南サウンドオフィス

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ハープとシンセサイザーによる透明なデュオ

昭和二十年三月十日未明、米軍B29約三百機が来襲、東京下町に約二時間半焼夷弾の雨を降らせた無差別爆撃で十万人余りが犠牲になりました。これを東京大空襲と言い、その夜、私の父は二十歳で、母と弟三人の家族5人で深川区(現江東区)に暮らしていました。
空襲が始まると、父はすぐ五歳になる弟を背負って逃げ、母と他の二人の弟たちとは生き別れ、そのまま二度と会うことはありませんでした。業火の中を逃げまどい、最後は力尽きて市電の線路に倒れた父は、明け方になり炎が両方に引いていくと「ああ、自分は助かったんだ!」と感じたと言います。
ひどい火傷で目が見えず朦朧と歩いていると、近所の女性から「康ちゃん、大変だよ!」と言われ、初めて、背中で弟が亡くなっている事に気付いたそうです。父は後々まで、家族を満足に弔ってやれなかったことを悔やんでいました。
そんな父は、子供が大好きで、後年近所の子どもたちにせがまれて、よくお話を聞かせていました。
私も父から怪談話を聞いた夜などは、トイレに行くのが怖い程で、父の語りには鬼気迫るものがありました。
ところが、雄弁であるはずの父は、とうとう亡くなるまで、家族である私に対しても、空襲体験を語ろうとはしませんでした。
ある時、私がコンバットという人気番組を見ていると、父が「戦争なんか見たくない!」と言って、いきなりテレビを切ってしまいました。私は何のことだか理解できず、唖然としたのを覚えています。
平成七年、我家で空襲の犠牲になった祖母やおじ達のために五十回忌の法要を行ないました。
戦災のどさくさ紛れで、肉親をキッチリ供養してあげられなかった自責の思いが少し晴らされたのか、父はその頃から毎年三月十日の命日には、東京砂町にある東京大空襲戦災資料センターに通うようになりました。

2年前父が急逝した後、父の遺品を整理する中に、便せん五枚にボールペンで書かれた「東京大空襲への意見書」が見つかりました。私はこれを読んで、父の秘めたる無念さを思い知らされました。
「あの空襲のあった九日の夜、逃げ場を失い肉親家族四人を失った者の悲痛な叫びを聴いてもらいたい」と呼びかけ、さらに「あのような殺戮」「修羅地獄」「恐怖のどん底」という言葉に至っては、その場を体験した父の魂の底から絞り出すような切々たる叫びが響いてきます。
「そうだ、お父さんにとって人生でやり残したのは、空襲体験を伝えきれなかったことではないか。」だとしたら、息子として私にできるのは、音楽家としてそれを音楽で引き継いでゆくことが父の意志を継ぐことになるのではないか?」という想いが湧き上がってきました。父の納骨を終えた後、戦災資料センターに行き、事務局の方に私の想いを伝えました。年が明けて、昨年の正月に戦災資料センターから「三月十日の東京大空襲を語り継ぐつどいで演奏して欲しい!」と依頼があり、妻と相談して、妻が新たに東京大空襲の鎮魂のために作曲をしてくれました。催しではこの空襲をテーマにしたオリジナル二曲を演奏し、それから一年かけて今年の三月にCDとして発表しました。
2008年には、各方面で東京大空襲が大々的に取り上げられ、その流れで、私共のCDも各新聞社が写真入りで紹介してくれることになりました。ご縁とは不思議なもので、その記事を読まれた仏教情報センターテレフォン相談員の方の目に止まり、六月には「キャンドルナイト2008in大船観音」で広島原爆の残り火から採火されたキャンドルが揺らめく平和を祈る場で、この曲を演奏させていただきました。
私はこの催しを通して、仏教界の僧侶の皆さんが、平和について真剣に考え・行動していることを知り、感動いたしました。仏教の役割と音楽にも共通したテーマがあると感じさせていただいています。
私にとっては無縁であった戦争や空襲が、亡父の願いを引き継ぎたいと願った瞬間に、様々な皆さんからの助力によって、演奏する機会へと繋がっていく事に感謝しています。
これからも父から私にいただいた平和の灯火を受け継ぎ、平和を希求する輪が広まるよう、ハープを奏で力の限りを尽くしてまいりたいと願っています。

八木健一

平和祈念コンサート履歴

3月10日(木)東京大空襲資料センターで「鎮魂を願って」演奏。
3月11日(金)読売新聞朝刊・東京版に前日の東京大空襲資料センターでの演奏の模様が掲載

3月10日(水)東京大空襲「鎮魂を願って」演奏しました。(江東区北砂・東京大空襲戦災資料センター)
3月11日(木)読売新聞社会面に、前日の東京大空襲戦災資料センターでの演奏の模様が掲載されました。
7月25日(日)第2回平和を願うコンサート(埼玉県美里町・遺跡の森館)

3月9日(月)東京大空襲から64年「鎮魂と平和を願うコンサート」(門仲天井ホール)
8月9日(日)平和を願うコンサート(埼玉県児玉郡美里町「遺跡の森館」)
8月15日(土)声に出す平和への祈り「語り継ぐ東京大空襲」(港区高輪区民センターホール)

3月10日(月)CD「祈り・光へ」発売

3月10日(土)東京大空襲を語り継ぐつどい・演奏(カメリアホール・亀戸文化センター内)